連載コラム「こころの理解」


第4回「精神病性障害と神経症性障害」

「こころの不調」にもいろいろあります 「精神病性障害」から「神経症性障害」まで

第1回で、すべての心の悩みや病いは、「コミュニケーションの障害」として理解されることを述べました。ここでは、その状態を「こころの不調」と言いましょう。「こころの不調」と簡単にいいましたが、少し難しい言い方で「精神病性障害」と「神経症性障害」に分かれます。

理解していただくために、ここでは少し「道具立て」を必要とします。

  1. 私たちの「意識(知・情・意)」は「空間的性質」を帯びています。たとえば、私たちは愛について「海のように深く、また山のように高い両親の愛」と表現します。これはもちろん比喩ですが、私たちは形のない「精神的なもの」も形あるものとしてしか表現できないのです。「時間の経過」すらモノの変化で知るのです。(赤ん坊が少年になり大人になり老人になることを写真の変化で時の流れを知るのです。)英語でも、寛容なことをgenerous, broad-minded(広いこころ)と言いますね。反対に狭量な人のことを narrow-minded(こころが狭い)と表現します。このように目には見えない「こころ」を視覚化(空間化)して理解しているのです。
  2. ですから、私たちは「外的世界」と「内的世界」ということが理解できるのです。(これは空間的発想に私たちが慣れているからです。でもよく考えると「こころのうちそと」はそんなに当たり前でもないかも知れませんよね。「外的世界」は「世間」と言われたり、「あなた、汝」と言われたり、「対象」と言われたりするものです。「内的世界」とは、「私はこう思い、こう感じているということから成り立っている世界」のことです。もちろん「内的世界」にも「対象」(内的対象)は存在します。(例えば、亡くなった母も内的世界には存在して生きています。)ですから私たちは、よく「思い違い」(主観と客観の違いや他人との考え、感じ方のずれ)をしてしまいます。
  3. そして、私たちはふつう「外的世界」と「内的世界」の間にはしっかりと線を引いています。(「自我境界」とも言います)もちろん両者はいつも交流しています。

以上、これらの道具立てを使って、こころの不調が「コミュニケーションの障害」になっていることを示してみましょう。

Aさんの「自我境界」は縦に長い楕円形です。Bさんの「自我境界」は長方形です。

  • Bさんの発信(言葉・行動)五角形①はAさんには三角形②と受け取られて三角形③として伝えられた。③ではなく①ですよと修正を促さねばならない。
  • Aさんは大きな四角形④として発信したがBさんは小さな四角形⑤として受けとったのでAさんはもっと大きな四角形④ですよと修正を促さねばならない。
  • AさんにもBさんにも見え方は異なるが⑥の存在は共有されている。
  • Aさんには聞こえる⑦(事実)がBさんに聞こえない(事実ではない)。(幻覚?)もっと言うとAさんは自分の内的世界のものを、外にある(外的世界の)ものとして認識・経験しているのかもしれません。

イメージ的にいえば、神経症性障害というのは、ねじれてはいるが一応「地に足のついた」状態であり、精神病性障害というのは「地から足が離れた」状態(事実ではない)と言えるでしょう。

そこで「自我境界」がしっかりしていれば、「こころの中で考えたこと」は外に漏れ出てしまうことはありませんよね。ところが「精神病性障害」の方は、自分の考えが漏れ出て皆に自分の思っていることを知られてしまうので、まるで自分が裸にされているように感じて非常な恐怖感を味わいます。しかし、皆さんはこころの中で「恥ずかしいこと」を思ったとき思わず周りを気にしたことはありませんか?

以前、皆に自分が何を思っているのか全部知られてしまうので、怖くて教室に入れなくなった学生さんがいました。また、教室のなかで誰かが「バカ」と言ったのを、自分のことを言われたと思って怒り出した学生さんもいます(妄想的)。

コミュニケーションはまさに相互理解のためにあるのですが、いかに「誤解」が多いかが分かりますね。「妄想」とは、「修正不可能なる過てる信念」のことで、単なる「誤解」のことではありません。つまり説得不可能な信念のことです。ここではコミュニケ―ションの断絶が起きているのです。これにたいして「神経症性障害」はものごとを歪曲してとらえる、否定的な考えに支配されている状態のことを言います。しかし基本的には説得して誤解を解くことは出来るのです。

職場の人間関係で「うつ病」になった人も、厳しいA上司に𠮟られ続けた「事実」からと考えているうちは、被害的ではあるが「神経症」的なのでしょう。しかし、「あのA上司は自分に恨みを持っている」と考えるようになると「妄想的」と言えるかも知れません。

そうなると精神病性障害と神経症性障害の境界は曖昧になります。ですから「こころの不調」といっても神経症性障害の方が軽いとは必ずしも言えないのです。

LOTUSでは、このホームページ上に掲載している事例紹介や考え方に基づき、「こころの病を発症しないためには、どうすればよいのか」「従業員がうつ病などにならないようにするには、どのような人事政策や労務管理が求められるのか」「従業員がやりがいや達成感を感じられる職場を作り、こころの病に悩まされる従業員が発生しない会社にするにはどうすればよいのか」といった具体的なテーマを設定し、対処療法よりも防衛策に力点を置いた研修会、および講演活動を行っております。お気軽にお問い合わせ下さい。


〒814-0123
福岡市城南区長尾4-11-8 2F

営業日

10:00-17:00
火·木

Calendar Loading
  1. Schedule Loading

お問合せ・ご予約

 092-566-9956

※完全予約制になっております。

※新型コロナウイルス感染防止対策への取り組みとしまして、現在は、ビデオ・電話でのご相談のみ行っています。

※カウンセリング中または営業時間外にお電話をいただいた場合は、こちらから折り返しご連絡させて頂きます。

ご連絡

小宮豊(心療内科・精神科医師、臨床心理士)

1949年生まれ。佐賀県佐賀市出身。両親の転勤で愛知県名古屋市に移る。1974年に名古屋大学理学部物理学科卒業後、奈良県立医科大学に入学し、1984年に卒業。同年、九州大学医学部心療内科教室に入局。1985年より済生会福岡病院(福岡市:内科)、久徳クリニック(名古屋市:内科、小児科、呼吸器科)、古賀病院(福岡県久留米市:内科、呼吸器科)、不知火病院(福岡県大牟田市:精神科、内科)などの勤務医を務める。1990年、精神医学をさらに深めるため、福岡大学医学部精神科教室の研究生となる。1991年、日本心身医学会の認定医となる。1993年、福岡臨床研究所を設立し、同年小宮クリニックを開院する。1996年、日本臨床心理士認定協会認定心理士を取得する。2001年より、福岡・久留米・北九州にてホームレス支援活動に加わり、無料診察を行う。2018年、保険診療に縛られない「こころの悩み相談室LOTUS(ロータス)」を開設。
カウンセラーのプロフィール