連載コラム「こころの理解」


第6回「人間の発達」とは

1.人間の「心的発達」

「人間の発達」は主として身体医学的なものとして、身体測定・運動機能の発達とこれらの生理学的側面からのみ論じられてきました。一方、ひとのこころの発達が研究対象になったのは、19世紀後半、神経学(動物実験心理学)から人間の心理学へと移った頃です。

いずれの学派も最初は「自然科学」を模範として自分たちの学問を規定していました。しかし、さまざまな(個人)人間心理は「自然科学」の言葉では証明されていません。例えば、うつ病とセロトニン(神経伝達物質)が、関係があるにしても整合的に証明されていないのです。

ましてやうつ病が薬物なしによくなることの説明すらできていないのです。特定の原因なくうつ病になった人と、交通事故で片足を失った人がうつ病になったことの違いはどこに求められるべきでしょうか。それとも「うつ病」としては全く違いがないのでしょうか。

人間のこころの心理学が、自然科学のことばで説明される日には、「人間」は消滅しているかも知れません。AIが今後進化しても、Technological Singularity(技術的特異点)が本当に来るとは思われていないのです。(AIは人間を超えない)

人間のこころの発達(形成)

むかし、「人は人に対して狼である」と言った人(Hobbes)がいましたが、これは完全に虚構であって、互いに戦争しながらも人々は案外うまくやっていたのです。

敵対(排他性)から連帯へ(ヒューマニズム)

人間の歴史は「戦争の歴史」と言われています。しかし人間的な「こころ」も発展変化してきました。戦闘における強弱はあっても、武器を操る敵も同じ人間であり彼らにも家族がいることを知ったのでした。(ヒューマニズムのもとにおける連帯)

そして現在、核兵器を持つようになって、「やったら互いにおわりだ」というところまで来てしまいました。しかし人間の「こころ」は、そう穏やかではありません。ひとはいつもどこかに「敵」を見出してしまいます。(人は人に対して狼であるーHobbes)

私たちは、自らの内を覗くのが怖いのです。そこには何があるのでしょうか。あらゆる悪と災いを詰め込まれた「パンドラの箱」ですが、それでも最後にのこされたのは「希望」でした(ギリシア神話)。パンドラの箱は私たちの「こころ」を外在化したものでしょう。

私たち日本人にしっくり来るのは「十界互具」という言葉ではないでしょうか。したがって、私たちの「こころは」むしろ何千年と変わってはいないと言えるのではないでしょうか。

というわけで私たちは日常夢を見ますが、なぜ、とても「悪夢」が多いのかが分かるのです。

そこで必要になる「防衛」ということ

私たちは生起する「事実」を様々に解釈することによって、自分が傷つかないようにしています。これを心的防衛と呼んでいます。夢を「夢という現実」とすれば、私たちは昼間は無意識的に怯えて生活しているのです。

ところで「防衛」にはどのようなものがあるでしょうか。

  • 一番分かりやすいのは、「抑圧(Repression)」です。私たちは嫌なことは思い出したくないですよね。ところが「夢」はそれを許しません。
  • 「取り入れ(Introjection)」「僕は(強い・立派な)パパの子だ。」父親に「同一化」することで、不安が軽減されます。
  • 「反動形成(過補償)」「この世の悪を懲らしめるため警官になりました。」あまりに良心的で罪悪感を抱きやすいと、罪悪感を「外在化(外にあるもの)」します。たとえば「世間は泥棒にあふれている。」
  • 「理想化(Idealization)」尊敬する人の真似をいつの間にかしている。「取り入れ」と似ています。
  • 「投影(Projection)」第一印象の誤り。「意地悪そうに見えた初対面のひとが、話してみたら良い人だった。」自分の中にある「悪い人」のイメージを相手に当てはめて歪んでとらえていたのでした。
  • 「乖離現象」失明(見たくない)、記憶喪失(思い出したくない)など嫌なものに接することも思い出すことも完全に拒否しました。
  • 「幻覚・妄想」現実の否認。現実をありのままに受け止めることが出来ません。

いずれにしても、私たちは自分に都合の良いように外界からも内界からも「不都合な真実」から自分を守っているわけです。

2.ヒューマニズムを超えて、信頼から信仰へ(超越性)―開かれたこころ―

私たちはヒューマニズムによる連帯によって、近い将来核戦争を防ぐことが出来るかも知れません。しかし私たちのこころ覗いてみましょう、まさに「パンドラの箱」状態です。私たちのヒューマニズムは私たちの悪(利己心)に囲まれているのです。

「水平な連帯」は容易に崩れます。ホッブスの言ったことは、「心的現実」なのです。それは、先ほど述べたさまざまな「防衛」に示されています。

個人レベルでも世界の政治レベルでも基本的には同じです。個人や世界政治レベルでも「防衛」のみでは不十分で、あらゆるレベルでの悲劇は防げていません。世界は悪意に満たされていると確信しているひとが多いのですが、その悪意は自分が作り出したのです。

「地球は丸かった」

したがって、私たちが何回地球を回っても同じところに戻ってしまうように、ヒューマニズムはとても大切な私たちの財産ですが、「水平な連帯」では私たちの悲劇は続くと考えられます。

いくら計算速度を速くしてもsingularityには到達できない。1年かけて地球を一周しても1秒で地球を回っても、それは本質的に何か違ったことはしていないのです。

人間同士のヒューマニズム(水平の連帯)を超えるいわば垂直の連帯(=信仰)が必要です。人間は、いまだ自分自身の全体を知ることを怖れているのです。

LOTUSでは、このホームページ上に掲載している事例紹介や考え方に基づき、「こころの病を発症しないためには、どうすればよいのか」「従業員がうつ病などにならないようにするには、どのような人事政策や労務管理が求められるのか」「従業員がやりがいや達成感を感じられる職場を作り、こころの病に悩まされる従業員が発生しない会社にするにはどうすればよいのか」といった具体的なテーマを設定し、対処療法よりも防衛策に力点を置いた研修会、および講演活動を行っております。お気軽にお問い合わせ下さい。


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小宮豊(心療内科・精神科医師、臨床心理士)

1949年生まれ。佐賀県佐賀市出身。両親の転勤で愛知県名古屋市に移る。1974年に名古屋大学理学部物理学科卒業後、奈良県立医科大学に入学し、1984年に卒業。同年、九州大学医学部心療内科教室に入局。1985年より済生会福岡病院(福岡市:内科)、久徳クリニック(名古屋市:内科、小児科、呼吸器科)、古賀病院(福岡県久留米市:内科、呼吸器科)、不知火病院(福岡県大牟田市:精神科、内科)などの勤務医を務める。1990年、精神医学をさらに深めるため、福岡大学医学部精神科教室の研究生となる。1991年、日本心身医学会の認定医となる。1993年、福岡臨床研究所を設立し、同年小宮クリニックを開院する。1996年、日本臨床心理士認定協会認定心理士を取得する。2001年より、福岡・久留米・北九州にてホームレス支援活動に加わり、無料診察を行う。2018年、保険診療に縛られない「こころの悩み相談室LOTUS(ロータス)」を開設。
カウンセラーのプロフィール